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中日新聞掲載記事2003年掲載

ストレスや病気から心身を守るには【健康セミナー】

愛知県医師会と中日新聞社主催の第15回「健康セミナー」(日本医師会、名古屋市医師会後援、ツムラ協賛)が、2003年11月24日、名古屋市昭和区の市公会堂で開催された。
今回は、愛知医科大学医学部耳鼻咽喉科助教授の呉孟達氏が「漢方と養生について-主に漢方薬膳を中心に」、と題して講演。

漢方と養生について-主に漢方薬膳を中心に

呉孟達

今年も大ニュースが多い年でした。中でも WHO (世界保健機関)が今年 5月28日、 21世紀最初の重度感染症に指定したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、全人類の生命と安全を脅かす問題として衝撃的でした。今日はこのSARSの問題を取り上げながら漢方薬膳について講演したいと思います。

SARSの症状として38度以上の発熱や悪寒、筋肉痛、咳などありますが、これはインフルエンザとほぼ同じで、どれをとってもSARSに特徴的なものはありません。感染してから発症を防ぐ治療法はまだなく、若者より高齢者や病気を持つ人の死亡率が高くなります。確立された治療法がないため、現在できることは健康増進や感染予防です。

感染予防対策として隔離措置をとるなどの患者管理と、マスク着用やうがいなどの自己管理があります。また、何と言っても正しい睡眠・食事・運動で体の免疫、抵抗力を高めたりする感染防御をしていくことが大切です。

正しい食事とは何なのかを考えたいと思います。中国の古いことわざには「正しい食事をしていれば病気にならない。病気になったら食事を正せばよく、それでも治らなければ薬を使えばよい。」とあります。また古代ギリシャ医学の祖ヒポクラテスの言葉にも「食べ物で治せない病気は、医者でも治せない。」とあります。洋の東西共通概念として「食事を正すことなくして健康なし。」と言えます。西洋と東洋で同じ概念を持っていても、解釈では大きな隔たりがあります。西洋医学では主にカロリーと三大栄養素を中心に分析した“食養学(食事栄養学)”が主体となっていますが、東洋医学的考えでは、食物同士の食性の栄養バランスの均衡が大切とされています。この実践を“食養生”と言います。

例えばご飯、みそ汁、漬け物に豚カツとキャベツをレタスに変えただけの定食(豚レタ定食)があるとします。食養学では、キャベツとレタスの主な栄養成分は、それほど違いはありません。しかし食用生の考えでは、この2つは全く違います。キャベツは陽性のため「豚キャベ定食」は完全な陽性食になります。「豚レタ定食」は、レタスが陽性を抑え中性食に近くなります。人間が健康な状態では、ほぼ中性なので「豚レタ」の方がより栄養バランスが富んでいるということになります。

東洋医学では陰陽のバランスをとることが大切で、陰陽の不均衡が長期化すると抵抗力や免疫力が低下減少すると考えられています。「養生法」という本の中でも大切なのは「飲食を正すこと」と「医薬を利すること」です。飲食では、食べ物の中に必ず漢方薬を混ぜて調理しなければならないというものではありません。何よりも大切なのは、食事の陰陽バランスを実践することです。中性、陰性、陽性の代表的な食物は下図の通りです。

東洋医学では陰陽のバランスをとることが大切で、陰陽の不均衡が長期化すると抵抗力や免疫力が低下減少すると考えられています。「養生法」という本の中でも大切なのは「飲食を正すこと」と「医薬を利すること」です。飲食では、食べ物の中に必ず漢方薬を混ぜて調理しなければならないというものではありません。何よりも大切なのは、食事の陰陽バランスを実践することです。中性、陰性、陽性の代表的な食物は下図の通りです。

それぞれの食性は、保存や調理法によっても食性は変わります。例えば豆腐は生の状態では陰性ですが、湯豆腐にすると中性で、麻婆豆腐では陽性になります。調味料は酒や酢、ショウガは「陽」で、塩、蜂蜜などは「陰」です。

簡単な養生薬膳として「大根麻油鶏(マーユーチ)」があります。大根と鶏肉をショウガやお酒を入れて、ごま油で炒めるものです。ショウガや鶏肉は陽性の食物ですが、大根が陰性なのでバランスがよくなります。

健康セミナー

最後に「養生漢方」についてもお話します。基本的に薬膳と同じ考え方で、最大の目的は病気の予防、つまり末病先防です。その中で特に弱まった体を養ったり、体質の改善をしたりするような作用を持つものを「補剤」と言います。補剤の中でも代表的なものは「補中益気湯」と「十全大補湯」です。どちらも免疫機能活性や感染病機構の増強などがあり、虚弱体質の人に効果があります。ただ、「補中」は陰性体質向けの陽性補剤であり、「十全」は陰陽両方に合う中性となります。薬も陰陽バランスを考えることで効果が上がります。

中性食物 糖質を主成分に持つ殻物類(米、とうもろこし、芋類)、大豆、小豆、ビーナツ、ぎんなん、さやえんどう、椎茸類、春菊、小松菜、ニンジン、ブドウ、リンゴ、ホタテ貝、タコ、イカ、サンマ、ウナギ、鮭、カモ肉、豚肉、卵など。
陰性食物 大根、白菜、レタス、冬瓜、ブロッコリー、ニガウリ、レンコン、ごぼう、もやし、きゅうり、ホウレンソウ、チンゲンサイ、なす、イチゴ、トマト、バナナ、スイカ、キュウイ、ナシ、柿、豆腐、そば、緑茶、カニ、アサリ、アサリ、シジミ、海藻類など。
陽性食物 牛肉、鳥肉、羊肉、鹿肉、イワシ、サバ、エビ、ハマチ、マグロ、ブリ、キャベツ、シソ、ピーマン、カボチャ、タマネギ、ニンニク、唐辛子、ショウガ、カ ブ、ネギ、アスパラガス、桃、梅、ミカン、栗、サクランボ、みそ、酒など。

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