症例報告 愛知医科大学耳鼻咽喉科学教室

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症例報告 愛知医科大学耳鼻咽喉科学教室

漢方と養生について-主に漢方薬膳を中心に

考察

中医学の医療体系の中では、各々の疾病を的確に治療していくために「弁証論治」という独特な診療法が利用されている。 例えば、耳鳴りという病名に対して中医学的弁証論では、図4のようにまず邪気が存在している実証と正気が不足している虚証に大別される。実証はさらに肝火上炎と疲火鬱結、そして虚証は腎精虚損と脾胃虚弱の各証候に分けられる。これらの病態によって体中の上気失調が引き起こされ、最終的に「耳竅失聡」つまり、難聴や耳鳴りの発病にまで至るものと考えられる。
本症例に関しては中医学的診察法である「四診合参」の診断結果をもとに、いわゆる脾胃虚弱湿因証、すなわち脾陽不振、陽気不足により、清気が耳竅まで上昇することができず、さらに脾胃の運化機能の失調により水液が体内に停滞して湿邪(一種の液状病理産物)となり、耳竅を蒙蔽したこと(ここでの耳簸は主に現代医学の内耳に相当するものと考えられ、耳竅を蒙蔽したと言うのは湿邪が内耳を中心とする耳部の経脈や経絡を阻満し、内耳の機能障害を来たしたことを指している。)によって難聴、耳鳴りが発症したものと考えられた。
治療は健脾益気、昇陽通竅の治則要綱に基づき、鍼療法を行った。

中位学による耳鳴りの弁証分類

各治療穴の解剖学的位置や穴性は表1に示し、それらの組成理由については以下のように考えられる。つまり、耳門穴、翳風穴、聴宮穴は耳の周囲に位置し、耳局部に生じた病邪の駆除や停滞した気血の疎通、消散に効果的であるため、古来より耳鳴り治療の特効穴として広く利用されている。外関穴は耳門穴と同じく三焦経に属し、「遠近配穴」の法則に基づき取穴した。
百会穴は頭頂部にあり、別名「三陽五会」とも言われるように全身の諸陽経脈が本穴で交会(相互連絡)しているため、活血通絡、昇陽益気の特殊作用を持ち、前記の耳周囲の諸穴とともに耳鳴りを主治する常用穴の一つとされている。
また、「治病求本」の基本原則に従い、失調した脾胃二臓の機能改善を図るため、胃経の足三里穴、任脈の中院穴および膀胱経の脾兪穴を取り、健脾和胃の効を増強した。さらに水液代謝障害、すなわち湿邪を治療する際の要穴とされる胃経の豊隆穴も併用することによって去湿行水、益脾昇気の効を収める。
実際の治療効果については、合計6回の鍼施術後、最終的に左難聴は不変であったものの、左耳閉感、左耳鳴りのみならず、食欲不振、腹部膨満感、肢体困重などの全身の随伴症状も顕著な改善傾向を示した。つまり、脾胃の運化機能を強化し、益気補中、昇陽去湿によって耳竅への気血のバランスを整えながら、生体本来の自然治癒力を促進したことにより、鍼治療の功が奏したものと考えられる。

諸治療穴の穴性について

現在、近代医学的研究手法によって、鍼治療による内臓・自律神経系機能の活性化、生体防御機能の向上、末梢微小循環の改善作用などがすでに明らかにされている。
但し、経験医術としての鍼灸治療の本来の作用機序については、いまだ未知の部分が多く、その臨床効果が施術者によって千差万別であることも厳然とした事実である。これまで本邦で報告された耳鳴りに対する鍼灸治療の諸家の有効率はおよそ30~60%と示されている。
それに対して欧米では最近、Axelssonが騒音性耳鳴りに対して鍼治療群とプラセポ群との間に治療効果の有意差は認められないと報告し、また Podoshinらは鍼治療よりもバイオフィードバック療法の方が治療効果が優ると発表した。
さらにParkらはMEDLINEなどの四大医学データベースから抽出した耳鳴りの鍼治療の臨床研究成績を総合分析した結果、鍼治療の有効性は乏しいという厳しい評価を下し、反響を呼んでいる。しかしその一方で鍼治療の有効性を唱える報告も少なくない。中でも中国の一部の報告によると耳鳴りの改善率は 80%以上を示している。
全般を通しては、鍼治療が無効または効果が少ないと主張した報告に比べ、有効であったとする報告の方において弁証論治の吟味やその実践がより確実に行われているという傾向が見られる。つまり、日常耳鳴りの鍼治療にあたっては、中医学的弁証論治の勘案やその基本概念をより正確に把握し活用できるほど、治療成績の向上に大きく寄与するものと伺われる。本症例においてもその全治療過程を通じて弁証論治の重要性を非常に実感することができた一症例ともいえる。

近年、代替医療の一環としての漢方や鍼灸などに対する患者側の要望は、ますます高まってきている。そうした中で、より完成度の高い多次元的な医療体系を構築していく意味においても、今後さらに中医学の科学的検証を通して、その基礎理論の習得や診療方式の導入をより分かりやすく、明確化することにより、耳鳴に対する鍼治療の発展や普及を期待したい。

まとめ

中医学的に「脾胃虚弱湿困証」と弁証された急性感音難聴に伴う難治性耳鳴りの一症例に対し、脾胃の機能強化を中心とした鍼治療を行ったところ、良好な耳鳴りの改善効果が得られた。以上のことより、耳鳴りに対する中医

学的弁証論治の基本法則に基づいた鍼治療の有用性が示唆された。

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